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"刺さった本"の感想・書評を書いています。

ゴールデンカムイ考|2022-05-10の日記

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金カムロスを引きずっているのでつらつらと書く。

個人的に考える金カムは「大切なもの(多くが失った家族。あるいは夢、死に場所)」を取り返して故郷に帰る話。

杉本は物語の最後に新しい故郷と家族を得る。白石は孤児で大切なものも故郷もなかったけれど、房太郎の意志を引き継いでエピローグのあの結末だ。鯉登は士官としての覚悟を決めて、第7師団に身を賭した。月島も鯉登について行くことを決めたから、そこが新しい故郷のようなものだろう。ヴァシリは故郷に帰り、夢だった画家になる。尾形は最期に祝福を自覚し、家族の迎えとともに去った。

敗れた鶴見は家族の骨よりも権利書を守った。ウラジオストクが故郷になることはない。

 

ゴールデンカムイ、ストーリー自体はシンプルだし、冗長でもない。勢いがあって面白いから一気に読める。さらりと流れを追う分には難解でもないし、カタルシスもあるので満足できる。

一方で、キャラクターの心情や思惑、行動原理は非常に複雑だ。

本音と建前、心境の変化、歴史的な要因など。最初に読んだだけでは気づけない部分も多く、2周3週と読み返して味が深まる漫画だと思う。細かなコマ端の出来事や小物が伏線になってたりもする。

門倉キラウシマンスールの謎トリオも、ひょっとしたら和人、アイヌ、ロシアの対等で調和の取れた人間関係を描いているのかもしれない。