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言語学エッセンスの詰まった面白コラム|言語学バーリ・トゥード【書評・感想】

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言語学エッセンスの詰まった面白コラム|言語学バーリ・トゥード【書評・感想】

サブタイトル『AIは「絶対に押すなよ」を理解できるか』に惹かれて読み始めた。

ちょうど、画像生成AIやチャットAIを触り始めて、文字列のみで意図を伝える難しさ、日本語の曖昧さを実感として感じていたところだった。

「何かヒントを得られれば儲けものだな」くらいの気軽な思いで、本書の真っ赤な、プロレス感満載な装丁を手に取った。ぱっと見では言語学に関係する書籍だとはとても思わないくらいのインパクトある表紙だ。

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本題はコラム

結論からいうと、「AIへの意図伝達」というのは本書の主題ではなかった。本書を一言で表すなら、言語学のエッセンスを中心にした面白コラム集だろう。「AIは〜」と言うサブタイトルは、本書に収載されたコラムのうちの1トピックスに由来している。

著者である川添先生は「働きたくないイタチと言葉がわかるロボット」「自動人形の城」といった人工知能と自然言語処理に関わる書籍も執筆しているようなので、このコラムはそのPRも兼ねているのかもしれない。

求めていた内容がメインの本ではなかったが、日常と言語学を巧みに結びつけた話運びとキレのある比喩表現が面白く、つい笑いながら読んでしまった。

特に、言葉に込められた「意味と意図のズレ」を機械は理解できるのか?という視点は非常に興味深かった。この点については「自動人形の城」のメインテーマになっているようなので折に触れて読んでみたい。

 

ちなみに、タイトルの「バーリ・トゥード(「何でもあり」という意味の格闘技ジャンル)」や表紙イラストからわかるように、本書にはプロレスのネタがふんだんに散りばめられている。私にはよくわからなかったが、プロレスネタがわかると本書をより楽しめるのではないだろうか。


この本のコラムは、元々「UP」という東大の機関誌で連載されていたらしい。こんなに面白い読み物が学内で定期刊行されていることに驚く。いい大学にはオモシロも質が高いものが集まっているんだな。