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"刺さった本"の感想・書評を書いています。

読まれる文章を書く視点|『書評の仕事』【書評・感想】

表題の本を読んだ。 年間500冊もの書評を執筆する書評家・印南 敦史氏による執筆論の本だ。 脅威の仕事量の書評家・印南 敦史 印南氏は紙・WEB媒体を問わずに執筆しているベテランの書評家で、その執筆量は月40本にものぼるという。 以下は本書で挙げられて…

創作論全般に通じる短歌の技法書|『天才による凡人のための短歌教室』【 書評・感想】

『天才による凡人のための短歌教室』は、現代短歌ブームを牽引する木下龍也氏の初心者向け指南書。具体的な作歌手法や創作方針が紹介され、木下氏自身が商業的歌人になるまでの足跡が描かれている。創作を職業とする者にとっては貴重な洞察が詰まった一冊。

「短歌」とは文章のひとつの極点だった|歌集副読本『老人ホームで死ぬほどモテたい』と『水上バス浅草行き』を読む【書評・感想】

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香水の帝王による辛口香水批評|世界香水ガイドⅢ【書評・感想】

ルカ・トゥリン氏らによる「世界香水ガイドⅢ」を読んだ。 ルカ・トゥリン氏はレバノン出身の生物物理学者で、香りに関する研究の第一人者だ。彼は2001年と2004年にフランスで香水批評の最高栄誉であるジャスミン賞を受賞し、2009年には英国でも同賞を受賞す…

書き手の思考プロセスを垣間見れる本|ライティングの哲学【書評・感想】

【書評・感想】『ライティングの哲学』は書く苦しみと試行錯誤の過程がリアルに読める本だ。執筆論の本では珍しく思考プロセスにライトが当たっており、書き手として有用な一冊だ。

植物名の誤謬を切る軽快エッセイ|牧野植物随筆【書評・感想】

私は高知県の出身なのだが、そういえば高知の名士についての本を読んだことがなかった。そんな折に手に取ったのがこの本、「牧野植物随筆」だ。 牧野富太郎先生は高知県出身の植物学者で、日本の植物学の父とも呼ばれている。日本初の植物誌を編み、ヤマトグ…

仏教にも通じる哲学|バガヴァッド・ギーター (講談社学術文庫)【書評・感想】

『バガヴァッド・ギーター』とは、古代インドの叙事詩『マハーバーラタ』の中の一幕。血族を巻き込んだ大戦争に心を痛めた英雄・アルジュナに対し、彼の導き手であるクリシュナが教え諭す場面を抜粋したものだ。 戦場の只中で膝を折るアルジュナに、クリシュ…

生き抜くための"弾丸"の話|砂糖菓子の弾丸は打ち抜けない【書評・感想】

「砂糖菓子の弾丸は打ち抜けない(桜庭一樹先生)」を読み返した。鬱作品と名高い小説だけど、辛い現実を生き抜く祈りも感じられる名作です。【書評・感想】

「RRR」:知っていてより楽しめたインド神話知識

最高だったインド映画、「RRR」。 わかりやすいストーリーと派手な演出・アクションのおかげで前情報なしでも楽しめる作品だが、多くのインド文化・習俗・伝承にまつわる描写が練り込まれており、それらを知っているとより楽しめるようになっている。 私自身…

「RRR」の短い感想

インド映画「RRR」を(今更ながら)観てきた。 ラージャマウリ監督の作品は「バーフバリ」も怒涛の熱量と目力、神話級のド派手演出で最高だったのだが、今作も別ベクトルで最高な映画だった。 オタクの好きなものが全部詰まっている。 互いに敵と知らずに仲良…

食の多様性を残す意味|世界の絶滅危惧食【書評・感想】

大規模なモノカルチャー農業により、世界の食糧は均一化している。その陰で姿を消している非効率な伝統食について書いたのが「世界の絶滅危惧食」だ。文化史とともに、食の遺伝的多様性の重要性を解説する一冊【書評・感想】

祈るような仕事、本づくりに誠実であること|古くて新しい仕事【書評・感想】

本書は、一人出版社「夏葉社」島田潤一郎氏のエッセイだ。会社をやめ、どうして個人で出版社を始めるようになったか。その経緯と、「本を作ること」への想いが綴られている。【書評・感想】

深くて自由な「書き込み」の世界|マルジナリアでつかまえて

本への書き込み。その効果と魅力。文豪の読書法・読書中の思考はどんなものだったか。それらを紹介しつつ、マルジナリア(書き込み)をおすすめするのが本書だ。軽い読み口で一歩踏み込んだ読書術が紹介されいる【書評・感想】

ひとのマルジナリアが読んでみたい

マルジナリアでつかまえて(本の雑誌社)という本をよんでいる。 マルジナリアとは「本の余白への書き込み」を指す英語らしい。あれ、一言で表現できる言葉あったんだ。 私は図書館を多く利用するのもあって本へ書き込みはしない派だが、読みながら付箋がわ…

言語学エッセンスの詰まった面白コラム|言語学バーリ・トゥード【書評・感想】

本書は言語学者・川添 愛先生が執筆した言語学コラムをまとめた本。 日常と言語学を結びつける話運びと、キレのある比喩表現が面白い一冊。【書評・感想】

異世界転生のガイドとしても。|中世イングランドの日常生活【書評・感想】

中世ヨーロッパの社会構造はどうなっているか。うっかりタイムトラベルしたら何に注意すべきか。そんな歴史的な要素をライトな書き方で紹介している。【書評・感想】

謎解きにだけ集中できる、期待の新ミステリ|密室黄金時代の殺人【書評・感想】

鴨崎暖炉『密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック』。謎解きにだけ集中できる工夫が新しいミステリー小説/推理小説だった。感想と書評を添えて紹介。

数学の歴史をさくっと紐解く|数学史入門【書評・感想】

高校までに学んできた様々な数学の公式。それらがどんな時代に生まれ、発展したかを数式とともに紐解くのが、本書「数学史入門(講談社)」だ。読んだ感想・書評を紹介。

良質な書評の大入り袋|文学の福袋(漱石入り)【書評・感想】

新年に最適なブックガイド・書評本。それがみすず書房「文学の福袋(漱石入り)」だった。読んだ感想と、紹介されていた中で特に気になった本を紹介する。

水中の遺伝子をどうやって読み解く?|環境DNA入門【書評・感想】

近年注目され始めた環境DNAとはなんなのか。そんな疑問にわかりやすく答えてくれるのが、岩波書店の書籍「環境DNA入門」だ。本書の概要について、感想を添えて紹介する。

「研究者」の熱意に触れられる本|キリン解剖記【書評・感想】

新進気鋭の生物学者が書いたポピュラーサイエンス本「キリン解剖記(ナツメ社)」。著者の研究生活と熱意が窺い知れるとてもいい本だった。読んだ感想を添えて紹介。

本へ書き込むということ

本が汚れることに抵抗感があった。 小説でも漫画でも、なるべく新品で買って綺麗に読む派だった。古本はなんだか嫌な感じがして、表紙にスレや傷がつくのも避けたかった。カドを折るドッグイヤーなんてもってのほか。ものを食べながら本を開く行為は万死に値…

非合理な愚かさを掘り下げる|「バカ」の研究【書評・感想】

なぜ人は非合理的で愚か(バカ)な行動をしてしまうのだろう。そんな永遠の謎を、心理の大御所研究者23人が大真面目に研究したのが本書だ。とてもいい本だったので、感想を添えて紹介したい。

本好きの自由研究|文庫本は何冊積んだら倒れるか【書評・感想】

本の雑誌社から刊行された、本好きな大人の自由研究といった面持ちの本。しょうもないけれどディープ読書好きには刺さる、そんな考察がまとまった良書。面白かったので書評を書いてみた。

くだらないものがわたしたちを救ってくれる|2022-11-24

「くだらないものがわたしたちを救ってくれる」(柏書房)は、線虫を使った遺伝子解析を研究している、韓国の研究者の書いたポピュラーサイエンス本だ。研究者の日常がありのままに文章にされており、読み物として面白い本だったので、感想を添えて紹介する。

ウタの少女性|2022-09-04の日記

今更ながらワンピースFILM REDを観てきたが、 ・庇護によって世界と断絶した子供・救世主の役を背負わされた少女・悪意なき罪人・スケールのでかい自己犠牲 と、好きな概念てんこ盛りで心臓をやられてしまった。 曲を聞いているだけで解釈が刺さり、スリップ…

ゴールデンカムイ考|2022-05-10の日記

金カムロスを引きずっているのでつらつらと書く。 個人的に考える金カムは「大切なもの(多くが失った家族。あるいは夢、死に場所)」を取り返して故郷に帰る話。 杉本は物語の最後に新しい故郷と家族を得る。白石は孤児で大切なものも故郷もなかったけれど…

ゴールデンカムイ完結|2022-04-28の日記

ゴールデンカムイ完結。最終回、見事だった。見事だったとしか言えない。 よくあれだけの話をちゃんと畳みきったな、と思う。 ワンシーン「山猫の死」に意識を持っていかれた。 後日談のたった一コマでしかないが、そこに描かれている情報量にくらくらする。…

感情ぐるぐる漫画|2022-04-23の日記

売れっ子漫画家×うつ病漫画家 を読む。Twitterトレンドから。 すごい漫画だ。読み進めると見え方が二転三転する。 序盤は「信用できない語り手」。 どん底の受けを掬い上げて世話を焼く攻め。その動機や熱意はなんなのか、というところに違和感や不穏さ、薄…